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2015年7月27日月曜日

第一期来場者アンケート集計結果

太閤山ビエンナーレ2015では、「もっと来場者とのコミュニケーションがあったほうがいい」という声にこたえて、前回(2013)は第二期から取り組んだ来場者アンケートを、今回は第一期冒頭から集めることにしました。
熱心にアンケートを記入くださる皆さんへの感謝の気持ちをこめて、出品作家のミニ作品プレゼントも行っています。
その甲斐あって、第一期に書いていただいたアンケートは総数、261通。その内容を簡単にご紹介します。
おいでいただいているのは、やはり県内のお客さまが大半。人口の多い富山、高岡と地元の射水市がかなりを占めていますが、黒部や入善などの県東部からの方もおられます。県外では、石川県が多いですが、岐阜県、東京都、神奈川県、なかには佐賀県という方も!
男女比!見事に男性の倍の女性。アートに関心を持ってくれるのはやはり女性が多いのでしょうか。
そして年齢層!60代パワー恐るべし。そして70代以上も大健闘。ちょっと残念なのは30代~40代でしょうか。太閤山ランドの来場者としては、30代は決して少なくないはずなのですが…。
この展覧会を知ったのは、口コミがやはり強いようです。新聞もかなりの割合です。(ありがとうございます!)
そしてありがたいことに、第二期、第三期も観る予定だよと言う方が、なんと9割近く!
また展覧会を見ての感想として、大変よい、良いと言ってくださった方は堂々の9割以上!
これは本当に励みになります。どうもありがとうございます。

個別の感想、これがまた実に多様なお言葉をびっしりと書いていただいています。全部書き起こしていますが、整理のしようがなかなか。あまり整理しないまま、そのまま載せようかどうしようかと悩んでいるところです。

第二期もたくさんのアンケートをいただいています。引き続き集計していきますので、どうぞよろしくお願いします!

第二期アーティストトーク7/19

少し更新を滞らせてしまったので、先週のアーティストトークのご報告になります。
この日は広田郁世さんから。本人は「汚い」出来だといわれるんだけど、だれもそうは思わない作品。若手が多い第二期の中ではキャリアの長いほうになっちゃう広田さんだけど、なかなか思い通りの画面にはならないものらしく。でも、そういう画面との対話が、観てる人には案外おもしろかったりしますよね、などと。
続いては井澤郁子さん。テンペラ絵具を使って、幼いころの記憶を描きとめる制作。一番若い彼女が自分の幼いころの…と語るのを聞くのは不思議な心もちでしたが、そういう思いってなるほどあるのかもなあと共感したり。三点三様の作品も、試行錯誤の過程なのだろうと。これからどんな画家になっていかれるのでしょうか。とても楽しみですね。

ギャラリーから太閤山荘へ場所を移して、ラドカ・ミレロバさんの藍染めの作品。通訳は息子のロビン君。キャラクター的なものと仏教的なものと「涙のリクエスト」。チェコから来られた彼女が日本の文化を自分なりの見方でとらえて生み出された表現の力強さは、とてもとても興味深い、奥深いものがありました。(もっとゆっくりとお話してみたかったです。)
後藤晃太さんのガラスと水のインスタレーション。季節と場所を意識して、涼感をねらったという作品は本当に心地よくて。しかしとても微妙なバランスで成立する作品だけに、設置も、また設置後のメンテナンスにも苦労しておられることなども伺うことができて。作品同様にさわやかな人柄にも触れさせていただきました。
太閤山荘のヌシさんにもあいさつ。

2015年7月17日金曜日

パフォーマンス&アーティストトーク(7月12日)

太閤山ビエンナーレでは、毎週日曜にイベントを開催しています。
7/12には、岡部俊彦さんのパフォーマンスと、第二期最初のアーティストトークが出品作家多数が参加して、実施されました。


まずは岡部さんのパフォーマンス。後ろに置かれた白い板には、この後でライブペインティング。


サウンドはDJアライグマさんとニュートラルプロダクションさんが担当。


展望塔基部での巨大インスタレーションを縦横に舞台としての豪快なパフォーマンス!


続いてはアーティストトーク。トップバッターは広田郁世さん。彼女の作品は構図がユニークなものが多いんですよね。


川原和美さんの真っ白な作品。これだけ大きな作品を自宅で作るのは、やっぱり大変らしいです。


第二期最年少の井澤郁子さん。幼いころの思い出がインスピレーションのもとになっているんだそうです。


ギャラリー奥の空間に不思議な詩情を漂わせている高慶敬子さん。亡くなられたお父様への想いが作品に込められていると伺い、「!」と電気に打たれた素晴らしいトークでした。


ギャラリー入口の窓辺の空間。第二期は加治晋さんの石彫。イタリア産の大理石に深い思いが刻まれています。


ギャラリーから少し涼しくなり始めた外へ。思わず和んでしまう紫陽庵の空間にしっくりとなじんでいる鋳金作品は上田剛さん。鋳ものの奥深さを感じるお話でした。
ここではパフォーマンスを終えた岡部さんも合流。大迫力のパフォーマンスの舞台裏の苦心談もなかなか聞けないアーティストトークでした。


太閤山荘へ場を移して、設置に苦労していた後藤晃太さんのガラスを用いたインスタレーションには、皆さんからいろいろ質問も出ました。これは場を見事に活かしています!


この日の最後は射水館でニュートラルプロダクションさんのサウンドインスタレーション。パフォーマンスの裏方もお疲れさまでした。


2015年7月15日水曜日

北日本新聞で第二期アーティストトークを紹介くださいました

今朝の北日本新聞に、文化部寺田デスクの記事が掲載されました。猛暑の日曜日、パフォーマンスからアーティストトークまでの長丁場を熱心に取材いただき、軽妙な語り口で太閤山ビエンナーレの魅力をご紹介くださいました。

われらが太閤山ビエンナーレは、名前のせいなのか、“越後妻有”とか“瀬戸内”みたいな国際芸術祭っぽいのを期待してくるお客様も少なくないので、われわれもそんな風にイメージがぶれる部分もあります。でもこの展覧会は、同じ富山の作家たちが「全身全力の手作り」で取り組んでるということがすごいところ。客寄せになるような高名な招待作家とかはいませんけれど、だからこそ伝わるものもあるのです。

そして県外のお客様も意外に少なくないのですが、アンケート等を見れば、結果としてこの皆さんにも「富山の現代作家たちの水準はすごい!」と言わせる内容に実はなっています。

そういうことは、実際に現場に足を運んで見てもらわないと言葉では伝えきれないものがあります。
「富山のアートは面白く盛り上がってきている」ということを、皆さんにはやっぱり自分の目で体験してもらうと、全体の状況もさらに面白くなってくるという相乗効果が起きるのです。

毎週アーティストトークをやるのも実は大変なのですが、一般の皆さんもどしどし参加して、アーティストたちとの対話を楽しんでほしいと思っています。

2015年7月9日木曜日

第一期の展評を尺戸智佳子さん(黒部市美術館)にお送りいただきました

「太閤山ビエンナーレ2015-富山の美術家たちの今」 第1期を見終えて

尺戸智佳子

 「富山県に在住する作家たちが世代を超え、流行に左右されることなく次代を切り開くことを目指して今年も集まりました。平面から、立体、インスタレーションに至るまで分野は問わず、ベテラン・中堅作家から若手までの広い世代が互いに刺激し合い、切磋琢磨する場、総勢約50名の作家みずからが主導して立ち上げ推進する「手作り」の展覧会です。富山の美術家たちの「今」をどうぞごらん下さい。」(太閤山ビエンナーレ2015「ごあいさつ」より)

 「流行に左右されることなく次代を切り開く」という一文に、地方で制作する作家たちの葛藤と決意を強く感じた。それは突き詰めてみるとどのような事だろうか。
 
 メイン会場はふるさとギャラリーで、ここには主に平面作品とインスタレーションが設置されている。本郷仁の《Captive Gaze ~between the moons~》は円形の枠に三角形の鏡がレリーフのように組み合わされた2対の立体が吊られてゆっくり回転している。鑑賞者の身体が所々に映るので、まるで切り取られたように身体の一部がクローズアップされる。玉分昭光の銅版画は、「ナリタチ」や「縁」のようにテーマが普遍的であった。古事記のような神話性や洞窟の壁画のような懐かしさが感じられ、細部をじっくり鑑賞することも楽しかった。アートNPO工房COCOPELLIに所属するアールブリュット・アーティスト末永征士の作品は他と一線を画す鮮やかさと開放感のある作品であった。
 屋外展示の作家は、公園内の好きな場所に作品を設置できるようで、その設置場所を探すところから制作がスタートするという。設置場所等に関して会場側との合意が必要だろうし、破損のリスクも高い中で作家の負担も大きいと聞く。美術館主催ではためらいがちであるが、作家主体の展覧会だからこそ思い切った場所に展示できる。くごうあいは、船の形の作品《Color Spectrum Ships~光・水・紋~》が気持ちよく佇むことのできる木漏れ日のきれいな小川を選んだ。会場の空間を意識したサイトスペシフィックな作品だ。ニュートラルプロダクション《beeping space》は射水館という休憩所にサウンドインスタレーションを設置した。ビーっという「音」についてのミニマルな作品であろうか。作家の言葉によると様々な「対」の境界を示す音のようだ。広い敷地内を散策する夏の展覧会、自販機のアイスクリームを食べながらベンチに腰をかけ音に耳を傾けた。後に、彼らの作品はかなり深いメッセージが含まれていたためアーティストトークを聞くと楽しかったと知った。ほぼ毎週末アーティストトークも頻繁に行っている。鑑賞者の立場としては作家の感性を共有できることはとても興味深く嬉しい。
 次に、太閤山荘という古民家の庭に一歩踏み入れると、曽根朗のサウンドインスタレーション《思い出せない些細なこと》ピンクノイズという信号とマリンバの音楽が流れる。ピンクノイズと太閤山荘が在る環境とのミスマッチは意図的なものであるようで、逆説的に世界の豊かさを感じさせる狙いがある。2階である屋根裏に展示された三隅摩里子の作品は、丸く切った段ボールのようなものを幾層にも重ねたインスタレーション《在る記憶》である。木造の屋根裏の美しい空間と歳月のなかに佇んでおり、庭から漏れ聴こえるノイズや音楽までもがその空間に取り込まれていた。

 今年の太閤山ビエンナーレは第1期から第3期にかけて出品作家が入れ替わる。第1期の出展者は22名と1組、作品展数は1度で鑑賞するのにはちょうどよい点数であった。しかし総勢約50名が一堂に会した量感もすばらしかっただろうとも思う。また太閤山ランドは、たまたま遊びに来る近隣の親子等が突然作品と出会うことが多い会場である。作品全てにおいて作家の言葉が添えられていたり、作家の小作品がプレゼントされるコーナーが設けられていた。先にふれたアーティストトークもあり、彼らが鑑賞者とどのように対話をするかということに対して開かれた意思が感じられた。
 作品について印象的であったことは、時代や社会への関心というよりは、宇宙的なもの、内向的なもの、自然や時の流れへの関心を示す作品が多かったように思われた。決して一概にできるものではないけれど、富山の豊かな自然に囲まれた環境で制作していることで何か影響することがあるのだろうか。そのような事を考えながら第2期、第3期を楽しみにしたい。

 「流行に左右されることなく次代を切り開く」とは、富山という地域で自身の表現をつきつめ若い世代を育てることなのだろうか。むしろ、その後に続く「切磋琢磨する場」という言葉が示すように、太閤山ビエンナーレという場で各々が自身の高みをめざす。地域おこしでもなければ、大規模国際展のようなテーマに沿ったグループ展でもない。太閤山ビエンナーレは富山の作家たちが各々をキュレーションしながら自身の表現を切り開いていこうとする芸術運動であるのかもしれない。


 (しゃくどちかこ 黒部市美術館)


本郷仁《Captive Gaze ~between the moons~》



くごうあい《Color Spectrum Ships~光・水・紋~》


三隅摩里子《在る記憶》


末永征士《ハナデストハッパ》


玉分昭光《縁‐さよならの舞‐》

2015年7月6日月曜日

北日本新聞で第二期スタートが紹介されました

今朝の北日本新聞で太閤山ビエンナーレの第二期スタートを大きく取り上げていただきました。いつもありがとうございます。
http://webun.jp/item/7196041
第二期はギャラリー外での展示作品もさらに増えて、展望塔はもとより、野鳥観測所、太閤山荘、紫陽庵などでチャレンジングな作品の数々が展示されていま す。また第一期からガラリと変わって若手中心のフレッシュな陣容がそろったギャラリー内の展示もいい会場に仕上がっています。
第一期のアンケートを受けて、キャプションの字を見やすくしたり、会場内の案内看板を増設したり、工夫もしてみました。第二期にもますます大勢の皆様にご来場いただきたいと願っています。どうぞよろしくお願いします!


2015年7月4日土曜日

第一期の出品作品

三期に分けて開催される「太閤山ビエンナーレ2015」、第一期は7月3日(金)で終了しました。第一期で展示終了する作品をご紹介しておきます。


入り口広場にほど近い虹の浮橋のかどに展示されているのはベテラン、埴生雅章さんの「TAIKOYAMAの風に」。
設置場所の状況を見事に活かした、洒落たインスタレーションです。緑の中に置かれた赤と白が風をはらんで、さわやかな印象を残します。


ふるさとギャラリー入口の大きな窓のある休憩コーナーの場をうまく活かしたのは本郷仁さんの「Captive Gaze ~between the moons~」。
Captiveは「魅せられた」、Gazeは「凝視」という意味だそう。二つの大きな鏡がゆっくり回転する空間は、ちょっとくらくらするような非日常的体験です。


ギャラリーに入って埴生雅章さんの「現象」(1)~(3)と「痕跡」(1)~(2)は不思議に千変万化する色彩の世界。
表現のひきだしの豊富さだけではなく、それをスパッと作品化する見切りの良さにベテランの味が出てますね。



清河恵美さんの水墨表現による「風・影 I」と「風・影 II」の連作は、作家のご自宅近くの何気ない風景を描いたもの。
極彩色で不定形な画面に大作を描くことの多かった作者ですが、近年の水墨シリーズは一見では穏健な表現に見えて、日常に潜む不穏な気配を描く視覚の鋭さはさらに深化中。



注目の若手、江藤玲奈さんの作品は、「おどり」(二点組)、「ピラミッド」、「楽しいを求めて」 。
一部が透けて見える独特の視覚で生きものの連続的な動きを描き出す表現は、生々しいものなのに妙にさっぱりとしたところもある、何ともユニークな作品群。



第一期最年少の橋本朋香さんの作品は「food」、「ポップコーン」、「パンケーキ」のアクリル画による大作三点。
色づかいが印象的な彼女の作品は、荒削りなところもありますが、好きなものを気持ちよく描き切って幸福感を感じさせるまっすぐさが魅力的です。




ベテラン舘寿弥さんの作品は和紙を貼り重ねた絵肌がなんとも味わい深い「相-I」、「相‐II」、「重層する円還」と、かわいい立方体の「相」が二組。
イメージを排して絵画の物質性を前面に出した表現は素晴らしい完成度。それだけに取っつきにくい印象を与えそうなところで、小さなキューブに引き込まれる巧みな構成。


同じくベテラン、能島芳史さんのフランドル技法による大作は「風蝕・南瓜 A」、「風蝕・南瓜 B」の二点。
干からびたカボチャの内面にミクロコスモスやマクロコスモスを見いだす独自の視点は近年継続しているモチーフ。手間暇かけて丹念に磨きこまれた絵肌に輝いて見えます。


堀敏治さんの大作「ささえになるもの」二点は、日本画の画材で描かれていますが、そういったジャンルの概念を超えた平面表現。
宇宙とも大河の流れとも読み解けるディティールは驚くべき密度と完成度で描きこまれながら壮大な物語性を暗示しているかのようです。


アール・ブリュットの画家、末永征士さんの大作「ハナデストハッパ」は大画面にマーカーなどの誰でも使える、ありふれた画材で描かれています。
技術的完成度の高い画家たちの間にあって、末永さんの作品はごく普通の道具しか使っていませんが、純粋な「描く喜び」の比類ない強さはこの会場でも際立って見えます。


水野利詩恵さんの大作「ヘルマフロディトスと見知らぬ女」は、神話の中の両性具有の人物を、なんと「すのこ」をつないだ上に描かれています。
細部に目をやると、彼女がいかに木目に魅せられ、材料との戯れを楽しみながら作品を描いているのかがよくわかって、微笑ましい気持ちになります。


玉分昭光さんの銅版画は「縁‐親子‐」、「ナリタチ‐親子‐」、「ナリタチ‐風景‐」、「ナリタチ‐始まり‐」、「縁‐さよならの舞‐」の5点。
画家みずからの生に根ざした個人的な物語を親密に描き出した作品は、銅版画の技法を駆使した表情豊かな表現で、観る人を画面にひき込む力があります。


太閤山荘の庭で聴こえている曽根朗さんの作品「思い出せない些細なこと」は、マリンバの音と特殊なノイズが約18分間でひとサイクルするサウンドインスタレーション。
どこからか聞こえる心地よいマリンバの音色にひき込まれ耳を傾けると、聴覚を覆い尽くすノイズがじょじょに強まり、突如訪れる静寂の一瞬。「あ!?」と心ふるえる体験です。